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 re-jewelry short story・がんばる女性の応援ストーリー

RE-JEWELRY SHORT STORY ③

7/31/2020

 
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不安と期待
 母から「お父さんは生きている、今、東京に住んでいる」と聞かされ、最初は、あまりにも唐突だったので信じられませんでした。けれど母の表情を見て、その首元で揺れる私が贈ったネックレスを見て、なぜだかすぐに、それが本当のことなんだって、素直に思えたのです。
 それは多分、今がコロナの時代真っただ中で、世界中の誰もが考えもしなかった事態におちいっていて、そういう思いがけないことって、本当にあるんだって、ここ数日ずっと考え続けていたからなのかもしれません・・・・。
 けれど私は今、父に会いたいとは思いませんでした。十代の頃だったら期待を胸に、すぐにでも会いに行ってたでしょう、けれど今は不安の方が大きいのです。父は今、東京でどんな生活をしているのだろう。どんな人と暮らしているのだろう、私が知らない家族と一緒に・・・・。子供もきっといるでしょう、私のきょうだい?、姉妹?・・・・。嫌だ!、考えたくない!、会いたくない!、怖い!、勇気がない!、会いにいっても、きっといい顔なんてされない!。
 だってそうでしょう、お父さんが生きていたのなら、一度くらい私に会いに来てくれたっていいじゃない・・・・(涙をふく)。
   母は「父は生きている、今、東京にいる」と言ったきり、それ以上詳しいことを話そうとはしませんでした。私もあえて聞きませんでした。ただ、東京に帰ってから見てと、一通の手紙を渡されたのです。父に関して詳しいことが書いてあるとのこと・・・・。今すぐ読みたい!、でも怖い!、いっそ破り捨ててしまおうか、そんなことできない・・・・、色々なことが頭をよぎります。良いことも悪いことも想像してしまいます。
 例えば父には幼なじみの初恋の人がいて、その人が不治の病にかかってしまい、どうしても父に会いたいってことで、二歳の私とお母さんを置いて、初恋の人の元に行ってしまったのだとか・・・・。父の実家は老舗の和菓子屋かなんかで、無理やり連れ戻され、お見合い結婚させられたとか・・・・。ああ、だめだ、映画やドラマの見過ぎだ、それも二流、三流の・・・・。こんな感じで、ふるさとの週末は、心ここにあらずという感じで、あっという間に過ぎてしまい、おいしい母の手料理を食べたこと以外は、何をしたのか、もう既に忘れてしまっていました。

 いつまでも母の手紙を読まない訳にはいかないので、東京に帰ってきてから三日後、ついに意を決して読むことにしました。窓の外にはくちなしの花が咲いていて、甘い香りが漂ってきそうでしたが、すぐ近くには、どくだみの花も咲いていて、二つの白い花は大きさと匂いは違うけれど、よく似ているな、などと思っていたら、自然に母の手紙の封を切っていました。そして内容は私が想像していたものとは、全く違うものでした。

 その建物は、東京郊外にあり、ラベンダーの花咲く、とてもいい香りのする庭の奥にありました。どことなく父の描いた風景画の中に出てきそうな建物でした。そして猫たちも、近くで遊んでいそうでした。
 母がすべての手続きをしてくれたので、私たちはスムーズに建物内に入ることができましたが、「お父さんは見た目、すごく老けてしまっているので、気を落とさないでね」と言われたことが、少し気がかりでした。
 そこは国立ウイルス研究所別館という所で、父は二十年以上もこの建物の一室で暮らしているということでした。長い廊下をドキドキしながら歩いていくさなか・・・・、とあるウイルスの難病にかかってしまった父が、一種研究実験材料のような形で何とか生かされ、最初は誰も、父が長く生きられるとは思っていなかったようで・・・・、母も私に対し、難病の父のことを、思わず死んでしまったのだと言ってしまったらしいのです・・・・。
 その部屋は驚くほどシンプルで、狭くはなかったけれど、窓もなく二十年も閉じ込められ、生き続けるにはあまりにも辛すぎる、そんな空間でした。私だったらきっと耐えられず、気が狂ってしまうでしょう・・・・。けれど私は次の瞬間、父の、今は老人になってしまったかのような父の脊中を見たのです。そう、あの広い脊中を・・・・。父は一心不乱に絵を描いているようでした・・・・。後で分かったことですが、二十年間、描き続けてきた父の絵の全ては、一人の幼子とその母親の姿でした。そこには二歳の頃の私の様々な姿が描かれていました。何枚も何十枚も何百枚も何千枚も・・・・、それらの絵を見た時、私の中にあった全てのわだかまりは、きれいに流れ、消え去りました。一緒にはいられなかったけれど、大切に思われていた、一途に愛されていた。それがうれしくてうれしくてたまりませんでした・・・・。また私がジュエリー好きだってことを知ると、父は器用な手を十二分に生かし、ジュエリー作りも始めたみたいでした。モチーフは少女と猫、私が「この子は私が幼い頃、よく遊んでいた猫ちゃんだね」って聞くと、父は「そうだよ、でも今は空飛ぶ猫型オタマジャクシになっていて、何年も前から、よくお前と一緒に空
を飛び壁をすりぬけ、ここに遊びに来てくれたんだよ」って言いました。父は確かに実年齢にしては、年老いて見えましたが、眼はキラキラと少年の様に輝いていました。私は思わず、そんな父を強く抱きしめたくなったのですが、それはかなわぬ夢でした。父とは、とても分厚いガラス越しにしか会えなかったからです。
 父の病気は、普通の環境下では筋力が異常に発達し過ぎてしまうというものらしく、やはりこの特別な一室から出ることはできない様でした。けれど私は、その後毎週の様に父に会いに行き、一緒にジュエリーのデザインを考えたり、父のとてもおもしろい少女と猫の冒険ファンタジーの話(現在「天然石少女」として単行本準備中)を聞いたりしていました。私にとってそれらは、かけがえのない大切な大切な時間でした。(作/やまみ河そら/ワークチュールヨシダ)

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    re-jewelry short story

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