RE－JEWELRY SHORT STORY ①

いつも、いっしょに
　東京で働く、まだ若いひとり暮らしの女性は、狭い自宅のアパートで、孤独な自粛生活をおくっていました。ゴールデンウィークには帰省して、故郷にいるたったひとりの母親に会いに行くのが楽しみでした。けれど、それは当然のごとく、今回のコロナ禍の状況下では、叶うことはありませんでした。電話で毎日のように話し、少ししてLINEのビデオ通話の映像で、顔を見合わせての会話になりましたが、それだけでは心の底から沸き出てくる寂しさや、不安を打ち消すことはできませんでした。そこで彼女が考えたのが、去年初めてのお給料で買い、ずっと身に着けていたお気に入りのネックレスを、母に贈るということでした。もちろん、消毒殺菌はしっかりとし、「私自身は行けないけれど、これを私だと思って下さい」というメッセージを添えて・・・・。すると母は、数日後それを身に着けて、とてもうれしそうにビデオ通話の映像で「いつもいっしょにいてくれているようで、とってもうれしい」と喜びを語ってくれました。もちろん私も、母が身に着けてくれたことが、すごくうれしくて、本当によかったと思い、その日の夜は久しぶりに、ぐっすりと眠ることができました。
　しばらくして今度は、母からの荷物が届きました。そこには、いつものように私の好きな食べ物や、かわいい柄の手作りマスクなどが入っていましたが、驚いたのは、母が大切に自分の部屋にずっと飾っていたものが入っていたことでした。それは父の描いた風景画でした。父は私がまだ幼い頃、病気で亡くなっていたので、その広い背中しか憶えていなかったのですが、その故郷の田園地帯を描いた風景画は、私も大好きなものでした。そして、驚くなかれ、右隅には私が幼い頃、すごく仲良くしていて、よく一緒に遊んだ猫たちの姿も、小さくですが描かれていたのです。私は懐かしさで胸がいっぱいになりました。添えられたメモには「お父さんが、きっとあなたを見守ってくれます！安心して！」と母のやさしい字で書かれてありました・・・・。最近は、ずっと悲しい涙が多かったのですが、久しぶりにうれし涙があふれました。（作・やまみ河そら／ワークチュールヨシダ）　

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